老犬の夜鳴き
理由と、家でできる対策
- 老犬の夜鳴きには、トイレ・痛み・目や耳の衰え・認知症・不安など、いくつもの理由がある
- 「年のせい」と決めつけず、まず動物病院で体の理由を調べてもらう。痛みなら治療で楽になることがある
- 家では「鳴いた時間とようす」を記録し、昼間に起きている時間を増やす・寝る前にトイレから始める
- しかる・大きな声を出すのは逆効果。不安が強くなって、夜鳴きが悪くなることがある
こんなことで困っていませんか
- 毎晩2時や3時に鳴きはじめて、家族が眠れない
- 前は朝まで寝ていたのに、急に夜中に起きるようになった
- 鳴いたときにかまうと癖になりそうで、無視していいのか迷う
- 集合住宅なので、近所に聞こえていないか心配
老犬が夜に鳴く、おもな理由
アメリカの動物愛護団体ASPCAは、年をとった犬が夜に落ち着かなくなったり起きたりする理由として、次のようなものをあげています(ASPCA(米国動物虐待防止協会)「高齢犬の行動の問題」)。
- 昼間に寝すぎている昼にたくさん寝ると、そのぶん夜に起きている時間が増えます
- トイレに行きたい・体がつらいおしっこが近くなった、関節が痛くて寝がえりがつらい、などを鳴いて知らせていることがあります
- 目や耳が衰えた見えにくい・聞こえにくいと眠りが浅くなり、前は気にしなかった物音に反応しやすくなります
- 認知症(認知機能不全症候群)脳の老化で、昼と夜のリズムがくずれます。夜中に歩き回る・鳴くのは、飼い主が最初に気づくことが多いサインです(コーネル大学 犬の健康センター「高齢犬の認知症」)
- 不安家族が見えない、暗くて場所がわからない、といった不安から鳴くこともあります
痛みも見のがせません。獣医学の論文では、夜に飼い主を起こすことは痛みに関係しうる行動の1つとされ、年をとった犬は痛みのサインをがまんして見せにくくなることがあると書かれています(Mills ほか(2020)「犬と猫の痛みと問題行動」)。
まずやること:動物病院で体の理由を調べる
ASPCAは、夜鳴きの対策として、まず動物病院でくわしく診てもらい、体の病気があれば先に治療することをすすめています(ASPCA(米国動物虐待防止協会)「高齢犬の行動の問題」)。行動が変わった犬は、年齢に関係なく体の診察を受けるべきとする動物病院の資料もあります(VCA動物病院「高齢のペットの行動の問題」)。
病院に行く前に、次のことを1週間ほどメモしておくと、獣医さんに状態が伝わりやすくなります。ASPCAも、夜に起きるきっかけを見つけるために記録をつけることをすすめています(ASPCA(米国動物虐待防止協会)「高齢犬の行動の問題」)。
- 鳴きはじめた時間と、どのくらい続いたか
- 鳴く前後にしていたこと(トイレをした、水を飲んだ、うろうろ歩いた、同じ場所でぐるぐる回った)
- 昼間に寝ていた時間、散歩や遊びの量
- おしっこの回数や量、水を飲む量がふえていないか
- 立ち上がる・寝ころぶときにつらそうか、さわると嫌がる場所があるか
認知症のサインがあるか気になるときは、犬の認知症チェックで記録して、そのまま獣医さんに見せることもできます。
家でできること
1. 昼と夕方に、起きている時間をつくる
ASPCAは、昼と夕方の活動を増やすことをすすめています。たとえば、短い散歩を何回かに分ける、好きな遊びをする、知っている芸(おすわり・おて)をおさらいする、おやつを探させるおもちゃを使う、などです(ASPCA(米国動物虐待防止協会)「高齢犬の行動の問題」)。コーネル大学の資料でも、寝る前にもう1回散歩をすると、ぐっすり眠りやすくなるとされています(コーネル大学 犬の健康センター「高齢犬の認知症」)。
足腰が弱った子は、長く歩かせる必要はありません。においをかぎながらゆっくり歩く、家の中でおやつ探しをする、といった「頭を使う遊び」でもかまいません(コーネル大学 犬の健康センター「高齢犬の認知症」)。
2. 寝る前に、困りごとを先に片づける
- 寝る直前にトイレに連れていく(家の中のトイレなら、行きやすい場所に置く)おしっこが近くなった子は、夜中のトイレのために鳴いていることがある
- 水を飲める場所を、寝床から近いところに見えにくい子は、いつもと同じ場所に置く
- 寝床は、すべらない床の上に、低くて段差のないものを足腰の痛い子が楽に寝起きできるように(VCA動物病院「足腰が弱った犬のための住まいの工夫」)
- 暗いと不安な子には、小さな明かり(足元灯)をつける目が見えにくい子に、夜の明かりがすすめられている(コーネル大学 犬の健康センター「高齢犬の認知症」、アメリカンケネルクラブ「年齢による耳と目の衰え」(獣医師執筆))
3. 毎日の流れを、できるだけ同じにする
ごはん・散歩・寝る場所・水の場所を毎日同じにすると、認知症の子も過ごしやすくなるとされています(コーネル大学 犬の健康センター「高齢犬の認知症」)。家具の配置も、なるべく動かさないようにしましょう(アメリカンケネルクラブ「年齢による耳と目の衰え」(獣医師執筆))。
4. 鳴いたときの接し方
鳴いたら、まずトイレ・水・寝床からずり落ちていないか・どこかにはまっていないかを、静かに確かめます。用事がすんだら、声をかけすぎずに寝床へもどします。
ASPCAは、飼い主がいらだったり、しかったりすると、犬の不安が強くなって鳴くのが悪くなると書いています。飼い主のどんな反応が鳴くことを強めているかを見つけて変えること、静かにしているときにほめることがすすめられています(ASPCA(米国動物虐待防止協会)「高齢犬の行動の問題」)。
5. 薬やサプリのことは、獣医さんに相談
ASPCAは、眠りやすくする薬や、昼に活動しやすくする薬について獣医さんに聞くことをすすめています(ASPCA(米国動物虐待防止協会)「高齢犬の行動の問題」)。コーネル大学の資料では、メラトニンが効く犬もいるが研究は少ないので、使う前に獣医さんに相談するように書かれています(コーネル大学 犬の健康センター「高齢犬の認知症」)。人の睡眠薬やサプリを、自分の判断で犬に飲ませるのはやめましょう。
近所への音が心配なとき
夜鳴きの理由をなくすのが先ですが、治療や工夫の効果が出るまでには時間がかかります。そのあいだは、寝床を外に面した壁や窓から離す、厚手のカーテンを閉める、といった工夫で、音が外にもれにくくなります。防音のケージを使う人もいますが、狭いところで息苦しくならないか、暑くならないかに気をつけてください。集合住宅なら、管理会社やお隣に「年をとった犬の世話をしていて、病院にも相談している」とひと言伝えておくと、気持ちが楽になることもあります。
こんなときは、様子を見ずに早めに動物病院へ
- 急に鳴きはじめて、体のどこかをかばっている、さわると怒る
- 急に首をかたむける、まっすぐ歩けない、目が左右にゆれる(前庭疾患のサインのことがある)
- 息が苦しそう、寝ているときの呼吸が速い(寝ている時の呼吸が早いとき)
- 水を飲む量やおしっこの量が急にふえた
心臓の病気がある子は、夜の息づかいも見てあげて
夜に落ち着かない、眠れないようすの陰に、息苦しさがかくれていることもあります。眠っているときの呼吸数を数えておくと、獣医さんに変化を伝えやすくなります。
よくある質問
老犬の夜鳴きは無視していい?
先に、トイレ・水・痛み・寝床からのずり落ちなど、鳴く理由がないかを静かに確かめてください。用事がすんだら、声をかけすぎずに寝床へもどします。しかったり、いらだった声を出したりすると、不安が強くなって悪くなることがあるとされています。
夜鳴きは認知症のサイン?
夜中に歩き回る・鳴くのは、認知症で飼い主が最初に気づくことが多いサインの1つです。ただ、痛み、トイレが近い、目や耳の衰えなど、ほかの理由でも起こるので、まず動物病院で調べてもらってください。
夜鳴きに効く薬はある?
眠りやすくする薬などを獣医さんが出すことがあります。メラトニンなどのサプリは研究が少ないので、使う前にかかりつけの獣医師に相談してください。人の薬を自己判断で飲ませないでください。
昼間に起こしておけば、夜は寝てくれる?
昼と夕方に短い散歩や遊び、おやつ探しなどで起きている時間をつくると、夜に眠りやすくなるとされています。無理に起こし続けるのではなく、楽しいことを少しずつ増やすイメージです。