老犬のトイレの失敗
しかる前に見ること
- トイレを覚えていた犬が年をとって失敗するようになったら、いちばん先に疑うのは体の病気(獣医行動学の専門医の解説)
- 膀胱炎、腎臓病、糖尿病、ホルモンの病気、関節の痛み、尿失禁、認知症などで起こる
- しかるのは逆効果。こわがって隠れてするようになったり、攻撃的になったりすることがある
- 病院では「回数・量・水を飲む量・失敗する場所と時間」を伝える。家ではトイレを近く・低く・すべらなくする
こんなことで困っていませんか
- ずっとできていたのに、トイレの場所以外でするようになった
- トイレシートの上に乗っているのに、はみ出してしまう
- 寝ている場所が、気づくとおしっこでぬれている
- 散歩から帰ってすぐ、家の中でしてしまう
しかる前に:まず体の理由を疑う
獣医行動学の専門医の解説では、トイレを覚えていた大人や高齢の犬が失敗するようになったら、最初に考えるべきは体の病気だとされています。おしっこやうんちを急がせる病気、するときに痛む病気、動きにくくなる病気、がまんする力が弱まる病気などです(Ballantyne(獣医行動学専門医)「犬のトイレの失敗:基本にもどる」Today’s Veterinary Practice(2017))。
動物病院の資料では、家の中でおしっこをする原因として、次のようなものがあげられています(VCA動物病院「家の中でおしっこをするときの検査」、VCA動物病院「高齢のペットの行動の問題」)。
- 膀胱や尿道の炎症・感染(膀胱炎など):何度も少しずつする、するときにいきむ
- おしっこが増える病気:腎臓病、糖尿病、クッシング症候群(ホルモンが出すぎる病気)など。水を飲む量も増えることが多い
- 薬の影響:ステロイドなど、のどがかわきやすくなる薬
- 神経の病気:おしっこをためたり出したりする力が弱まる
- 尿失禁:本人が気づかないうちにもれる(下で説明します)
関節の痛みも原因になります。米国動物病院協会(AAHA)は、外に出たりトイレまで歩いたりするのがつらくて失敗することを、高齢犬の痛みのサインの1つにあげています(米国動物病院協会(AAHA)「犬の痛みの15のサイン」)。さらに、ここまでの体の理由がないときに考えるのが、認知症(認知機能不全症候群)です(Ballantyne(獣医行動学専門医)「犬のトイレの失敗:基本にもどる」Today’s Veterinary Practice(2017)、ASPCA(米国動物虐待防止協会)「高齢犬の行動の問題」)。
「失敗のしかた」でヒントがわかる
| こんなとき | 考えられること |
|---|---|
| 寝ているとき・くつろいでいるときに、下がぬれている。本人は気づいていないようす | 尿失禁。避妊手術をしたメスの20%以上、大型犬では最大30%に起こるとされ、7割ほどは薬でよくなる(VCA動物病院「犬の尿失禁」) |
| 何度もトイレに行く、少しずつしか出ない、いきむ | 膀胱炎や尿路の病気(Ballantyne(獣医行動学専門医)「犬のトイレの失敗:基本にもどる」Today’s Veterinary Practice(2017)) |
| 水をたくさん飲み、おしっこの量も多い | 腎臓病・糖尿病・ホルモンの病気など(VCA動物病院「家の中でおしっこをするときの検査」) |
| トイレの手前や、シートの端ではみ出す | 足腰が弱くて、おしっこの姿勢を保てない・トイレまでたどり着けない(米国動物病院協会(AAHA)「犬の痛みの15のサイン」、VCA動物病院「足腰が弱った犬のための住まいの工夫」) |
| 散歩から帰ってすぐにする、寝床でする、場所を選ばずにする | 認知症のサインのことがある(ASPCA(米国動物虐待防止協会)「高齢犬の行動の問題」) |
| 留守番のときだけ失敗する | 家族と離れる不安(分離不安)のことがある(ASPCA(米国動物虐待防止協会)「高齢犬の行動の問題」) |
動物病院に伝えること
動物病院では、まず話を聞いて体を診察し、血液検査やおしっこの検査などをします。飼い主が伝える情報(ふだんのようす)が大事な手がかりになるとされています(VCA動物病院「家の中でおしっこをするときの検査」)。次のことをメモして持っていきましょう。
- 失敗が始まった時期と、1日に何回くらいか
- おしっこの回数・量、色やにおいがいつもと違うか
- 水を飲む量が増えていないか(1日に何回お皿を足しているか、でもOK)
- 失敗する場所と時間(寝ているとき?帰ってすぐ?留守番中?)
- いきむ、痛がる、立ち上がりにくい、などのようす
- 飲んでいる薬(ステロイドなど)
できれば、病院に行く日の朝のおしっこをとっておくと検査に使えることがあります。とり方は、かかりつけの病院に聞いてください。
家でできること
しからない
獣医行動学の専門医は、言葉や体罰でしかると、こわがる・不安になる・攻撃的になる原因になるので、しかってはいけないとしています(Ballantyne(獣医行動学専門医)「犬のトイレの失敗:基本にもどる」Today’s Veterinary Practice(2017))。失敗を見つけても、何も言わずに片づけるだけで大丈夫です。
においを残さない
においが残ると、同じ場所でまたしやすくなります。おしっこのにおいを分解するタイプ(酵素入りなど)の消臭剤で、しっかりふきとりましょう(Ballantyne(獣医行動学専門医)「犬のトイレの失敗:基本にもどる」Today’s Veterinary Practice(2017))。くり返し失敗する場所には、寝床やごはんのお皿を置いて「トイレではない場所」にする方法もあります(Ballantyne(獣医行動学専門医)「犬のトイレの失敗:基本にもどる」Today’s Veterinary Practice(2017))。
トイレを「近く・低く・すべらなく」する
- 近く寝床からトイレまでを近くする。家の中にトイレを増やす(ASPCA(米国動物虐待防止協会)「高齢犬の行動の問題」、コーネル大学 犬の健康センター「高齢犬の認知症」)
- 低くトイレトレーのふちが高いと、足が痛い子はまたげない。ふちの低いものや、シートを床にじかに敷く方法も(Mills ほか(2020)「犬と猫の痛みと問題行動」)
- すべらなくトイレのまわりに、すべりにくいマットを敷く。すべる床は痛い子が嫌がる(米国動物病院協会(AAHA)「犬の痛みの15のサイン」、VCA動物病院「足腰が弱った犬のための住まいの工夫」)
- 広くはみ出すなら、シートを2〜3枚つなげて広くする
トイレに行く回数を増やす
外でする子は、外に出る回数を増やしましょう。子犬のときのように回数を増やすことは、足腰が弱った犬にもすすめられています(VCA動物病院「足腰が弱った犬のための住まいの工夫」)。後ろ足を支えるハーネスを使うと、おしっこの姿勢を保ちやすくなる子もいます(VCA動物病院「足腰が弱った犬のための住まいの工夫」)。
もう一度トイレを覚え直してもらう手順は、老犬のトイレトレーニングのやり直し方にまとめました。
おむつを使うときは
おむつやマナーベルトを使うのも1つの方法です。コーネル大学の資料では、皮ふのただれを防ぐために、こまめに替えるよう書かれています(コーネル大学 犬の健康センター「高齢犬の認知症」)。おむつを使っても、もれる原因の病気が治るわけではないので、病院での相談は続けてください。
こんなときは、早めに動物病院へ
- いきんでいるのに、おしっこがほとんど出ない(とくにオス)
- おしっこに血がまじる
- 水を飲む量が急に増えた、食欲がない、吐く
よくある質問
老犬のトイレの失敗は、しつけ直せる?
先に体の病気がないかを動物病院で調べてもらってください。原因が治療できる病気なら、治療で失敗が減ることがあります。そのうえで、子犬のときのようにトイレの回数を増やし、成功したらほめる方法で覚え直してもらいます。
トイレシートからはみ出すのはなぜ?
足腰が弱って、おしっこの姿勢を保てなかったり、トイレの真ん中まで歩けなかったりすることがあります。シートを広くする、ふちの低いトレーにする、まわりにすべりにくいマットを敷く、といった工夫が役に立ちます。
寝ている間におしっこがもれているのは?
寝ているときやくつろいでいるときに、本人が気づかないうちにもれるのは「尿失禁」のことがあります。避妊手術をしたメスに多く、薬でよくなることも多いので、動物病院で相談してください。
失敗したらしかったほうがいい?
しからないでください。しかると、こわがって隠れてするようになったり、不安や攻撃的な行動の原因になったりするとされています。何も言わずに片づけ、においの残らない消臭剤でふきとりましょう。