犬が触ると怒るようになった
痛みのサインと対処
- 前は平気だったのに、さわると怒る・うなる・かむようになったら、まず痛みを疑う
- 獣医学の論文では、行動の相談で専門の病院に来た犬のうち、約3割〜8割に痛みのある病気が見つかったと報告されている
- 関節の痛み、歯の痛み、耳の病気のほか、目や耳の衰えで驚いていることも
- うなるのをしからない。「痛いからやめて」の合図を消すと、いきなりかむようになることがある
こんなことで困っていませんか
- 抱っこしようとすると、うなるようになった
- 腰やおしりのあたりをさわると、怒る
- 顔や口のまわりをさわられるのを嫌がるようになった
- 寝ているところに近づくと、かみつこうとする
まず痛みを疑う理由
犬と猫の痛みと問題行動についての論文では、行動の問題で専門の病院に来た犬のうち、およそ3分の1に痛みのある病気があり、病院によっては28〜82%にのぼったと報告されています。痛みによる攻撃は、寝ているときに近づかれたときに起こりやすいとも書かれています(Mills ほか(2020)「犬と猫の痛みと問題行動」)。
同じ論文では、年をとった犬は痛みのサインをがまんして見せにくくなることがある、とも指摘されています(Mills ほか(2020)「犬と猫の痛みと問題行動」)。「年のせいで気むずかしくなった」と思っても、痛みがかくれていることがあるのです。ASPCAも、年をとった犬の攻撃的な行動の理由として、まず痛みや体の病気をあげ、原因がわからないまま対処しても効果がないとしています(ASPCA(米国動物虐待防止協会)「高齢犬の行動の問題」)。
痛みのほかのサインも見てみよう
米国動物病院協会(AAHA)は、犬の痛みのサインとして次のようなものをあげています。さわると怒るようになった子に、ほかにもあてはまるものがないか見てみましょう(米国動物病院協会(AAHA)「犬の痛みの15のサイン」)。
- フローリングなど、すべる床を歩くのを嫌がる
- 階段をいやがる、上り下りの前にためらう
- ソファや車に飛び乗らなくなった
- 前足の力で立ち上がる(後ろ足を使わない)
- 何度もぐるぐる回って、なかなか寝ころべない
- 遊んだり、自分から寄ってきたりしなくなった
- なでたりブラシをかけたりすると、痛そうにする・身がまえる
- 夜によく起きる、寝る姿勢を何度も変える
- 休んだあとに体がこわばっている
- トイレの失敗が増えた(外に出るのがつらい)
顔や口のまわりをさわると嫌がるようになったときは、歯の痛みのこともあります。動物病院の資料では、顔や口をさわられるのを嫌がるようになる、かたいフードを食べなくなる、ゆっくりかむ、食べ物をこぼす、などが歯の痛みのサインとされています(VCA動物病院「犬の歯の痛み」)。くわしくは歯みがきを嫌がるときにまとめました。
痛み以外の理由
- 目や耳の衰え近づかれたことに気づかず、驚いて反射的にかむことがあります。ASPCAは、目や耳の衰えが、さわられることへの敏感さや攻撃的な行動の理由になるとしています(ASPCA(米国動物虐待防止協会)「高齢犬の行動の問題」)
- ホルモンの病気など甲状腺の病気やクッシング症候群などでも、イライラしやすくなることがあります(ASPCA(米国動物虐待防止協会)「高齢犬の行動の問題」)
- 家族やペットの変化引っ越し、新しいペット、家族の変化なども、年をとった犬には負担になります(ASPCA(米国動物虐待防止協会)「高齢犬の行動の問題」)
- 認知症家族にそっけなくなる、怒りっぽくなるのも、認知症のサインの1つです(コーネル大学 犬の健康センター「高齢犬の認知症」)
動物病院で伝えること
- どこをさわると怒るか(腰・足・首・顔・耳・おなか など)
- いつから、どんなときに(抱っこ・寝ているとき・ブラシ)
- 上の痛みのサインで、あてはまったもの
- 怒ったときのようす(うなるだけ/歯を見せる/かんだ)
論文では、痛みが疑われるときは、行動の治療より先に痛みの治療を試すほうがよいとされています(Mills ほか(2020)「犬と猫の痛みと問題行動」)。痛み止めで行動が変わるかどうかが、原因を見分ける手がかりになることもあります。
家でできること
うなるのをしからない
うなる・歯を見せるのは、「痛いから、それ以上はやめて」という合図です。動物病院の資料でも、うなったり、休みたがったりする犬をしかったり罰したりしてはいけないとされています(VCA動物病院「犬の爪切りのストレスを減らす」)。しかって合図を出さないようにさせると、いきなりかむようになることがあります。
さわり方・近づき方を変える
- 寝ているときは近づかず、起きているときに声をかけてから耳が遠い子は、床をトンと鳴らして気づかせる(コーネル大学 犬の健康センター「高齢犬の認知症」)
- 怒る場所はさわらない。抱っこは、獣医さんに痛みを診てもらうまで最小限に
- すべる床にマットを敷き、低くて寝起きしやすい寝床にする痛い子が楽に動けるように(VCA動物病院「足腰が弱った犬のための住まいの工夫」)
- ブラシや体をふくのは、短い時間で区切って、できたらほめる
家族、とくに子どもに伝える
痛みがある子は、急にかむことがあります。治療で落ち着くまでは、子どもが抱っこしたり、寝ているところをさわったりしないように、家族で決めておきましょう。
よくある質問
犬が触ると怒るようになったのはなぜ?
まず痛みを疑ってください。関節・歯・耳などの痛みで、さわられるのを嫌がるようになることがあります。目や耳の衰えで驚いている、ホルモンの病気でイライラしている、認知症、などのこともあるので、動物病院で相談しましょう。
触ると怒る場所で、病気がわかる?
腰や後ろ足なら関節や背骨、顔や口なら歯、耳なら耳の病気、などの手がかりにはなります。家では決められないので、どこをさわると怒るかをメモして獣医さんに伝えてください。
うなったら、しかるべき?
しからないでください。うなるのは「やめて」の合図です。しかって合図を出さないようにさせると、いきなりかむようになることがあります。さわるのをやめて、理由を獣医さんと考えましょう。