犬の認知症
症状と、家でできること

公開日:2026-10-25/更新日:2026-10-25

書いた人:いぬねこ健康ラボ管理人(運営者情報)

先に結論 認知症チェックで記録する(無料)
ここに書いたことは、獣医大学や動物病院、獣医学の論文にある一般的な情報です。うちの子に何が起きているかは、かかりつけの獣医師に相談してください。※イラストは架空の人物です。このサイトは獣医師の監修を受けていません。

こんなことで困っていませんか

犬の認知症とは

犬の認知症は、正式には「認知機能不全症候群」とよばれます。年齢とともにゆっくり進み、考える力が落ちて行動が変わる病気です。犬の脳には、人のアルツハイマー病に似た(同じではない)変化が起こるとされています(VCA動物病院「高齢のペットの認知機能不全症候群」)。

年をとるほど多くなります。アメリカの調査では、飼い主へのアンケートで認知機能不全が進んでいると考えられた犬は、8〜11歳で8.1%、11〜13歳で18.8%、13〜15歳で45.3%、15〜17歳で67.3%でした。一方で、そのうち以前に認知症と診断されていた犬は1.8%だけで、見のがされやすい病気だとされています(MacQuiddy ほか(2022)「認知機能不全が進んだ犬の危険因子」)。

動物病院の資料では、犬は7歳から毎年、認知症のチェックを受けることがすすめられています。大型犬は小型犬より早く年をとります(VCA動物病院「高齢のペットの認知機能不全症候群」)。

よくあるサイン(6つの変化)

獣医師のあいだでは、6つの変化の頭文字をとって「DISHAA(ディシャー)」とよばれる見方がよく使われます(VCA動物病院「高齢のペットの認知機能不全症候群」、コーネル大学 犬の健康センター「高齢犬の認知症」)。

変化たとえば
迷う(見当識の低下)家の中で迷う、部屋のすみや家具のうしろで動けなくなる、ドアのちょうつがい側で待つ、ごはんや水の場所がわからない、家族がわからないようす
関わり方が変わる甘えなくなる・呼んでも来ない、逆にべったり離れない、家族やほかの犬に怒りっぽくなる
寝起きのリズムが変わる昼に寝てばかりで、夜に起きて歩き回る・鳴く(飼い主が最初に気づくことが多い)
トイレ・覚えたことを忘れる家の中でトイレを失敗する、外から帰ってすぐにする、寝床でする、知っている合図にこたえない
活動が変わる遊ばなくなる、目的なく歩き回る、同じところをぐるぐる回る、壁や宙を見つめる
不安が強くなる前は平気だった雷や物音をこわがる、留守番で落ち着かない

出典:VCA動物病院「高齢のペットの認知機能不全症候群」、コーネル大学 犬の健康センター「高齢犬の認知症」、ASPCA(米国動物虐待防止協会)「高齢犬の行動の問題」

動物病院の資料では、このうち2つ以上のサインがあるときは、体と行動の両方を診てもらうことがすすめられています(VCA動物病院「高齢のペットの認知機能不全症候群」)。家で記録をつけるなら、犬の認知症チェックが使えます。

認知症とまちがえやすい病気

ASPCAは、「年のせい」と決めつける前に、関節炎、歯の病気、甲状腺の病気、がん、目や耳の衰え、尿路の病気、クッシング症候群などがないか調べるべきだとしています。それでも説明できないときに、脳の老化による認知症と考えます(ASPCA(米国動物虐待防止協会)「高齢犬の行動の問題」)。

動物病院では、ようすを聞いたうえで、血液検査などでほかの病気がないかを調べます。必要ならMRIで脳を調べることもあります(VCA動物病院「高齢のペットの認知機能不全症候群」)。

家でできること

頭と体を使う時間をつくる

動物病院の資料では、「使わないと衰える」として、知っている芸を毎日おさらいする、かんたんな新しい芸を教える、おやつを探させるおもちゃや宝探しで鼻を使わせる、その子に合った遊びや運動を続ける、ことがすすめられています(VCA動物病院「高齢のペットの認知機能不全症候群」)。コーネル大学の資料でも、においをかぐ散歩、ノーズワークマット、知育おもちゃなどがあげられています(コーネル大学 犬の健康センター「高齢犬の認知症」)。

毎日の流れを変えない

ごはん・散歩の時間、寝る場所、お皿の場所を毎日同じにすると、混乱しにくくなります(コーネル大学 犬の健康センター「高齢犬の認知症」)。

家の中を安全に

夜鳴き・トイレ・徘徊それぞれの工夫は、夜鳴き、トイレの失敗、徘徊のページにまとめました。

不安やいらだちを減らす

不安やいらだちは、考える力をさらに落とすとされています(VCA動物病院「高齢のペットの認知機能不全症候群」)。しかったり、急に環境を変えたりせず、静かに休める場所をつくってあげましょう。新しいペットを迎えるのは、年をとった犬には大きな負担になることがあります(コーネル大学 犬の健康センター「高齢犬の認知症」)。

薬・食事・サプリ

認知症の治療では、環境の工夫や行動の練習に加えて、薬を使うこともあります(VCA動物病院「高齢のペットの認知機能不全症候群」)。北米では「セレギリン」という薬が犬の認知症に使われていて、効果が出るまでに3〜6週間ほどかかるとされています(VCA動物病院「高齢のペットの認知機能不全症候群」、コーネル大学 犬の健康センター「高齢犬の認知症」)。日本で使える薬や、その子に合うかどうかは、かかりつけの獣医師に相談してください。

抗酸化成分やオメガ3脂肪酸、中鎖脂肪酸(MCT)などを加えた食事やサプリもありますが、年をとった犬での研究はまだ少ないとされています(コーネル大学 犬の健康センター「高齢犬の認知症」、VCA動物病院「高齢のペットの認知機能不全症候群」)。食事を変えるときは獣医さんに相談しましょう。

認知症と言われたら、余命は?

認知症そのものの余命を、はっきり示した資料は見つかりませんでした。認知症はゆっくり進む病気で、元にはもどりません(VCA動物病院「高齢のペットの認知機能不全症候群」)。ただ、早めに気づいて手を打てば、進み方をゆるやかにして、いっしょに過ごす時間の質を上げられるとされています(コーネル大学 犬の健康センター「高齢犬の認知症」)。ほかに持病があるときは、その病気の見通しもあわせて、かかりつけの獣医師に聞いてください。

コーネル大学の資料では、少なくとも半年に1回の健康診断と、月1回や週1回の家でのチェックがすすめられています(コーネル大学 犬の健康センター「高齢犬の認知症」)。

よくある質問

犬の認知症の初期症状は?

夜中に起きて歩き回る・鳴くといった寝起きのリズムの変化は、飼い主が最初に気づくことが多いサインとされています。ほかに、部屋のすみで動けなくなる、呼んでも来ない、トイレの失敗、遊ばなくなる、などがあります。

犬の認知症は何歳から?

年をとるほど増え、ある調査では8〜11歳で8.1%、13〜15歳で45.3%、15〜17歳で67.3%にサインが見られました。動物病院の資料では、7歳から毎年チェックすることがすすめられています。

犬の認知症は治る?

元にもどすことはできませんが、環境の工夫、頭と体を使う遊び、食事、薬などで、進み方をゆるやかにしたり、夜鳴きなどの困りごとを減らしたりできることがあります。

犬の認知症は予防できる?

確実に予防する方法はありません。知っている芸のおさらい、においをかぐ遊び、運動を続けることや、抗酸化成分を加えた食事などが、脳の健康を保つためにすすめられています。

急に認知症のようになったのは?

認知症はゆっくり進むので、急な変化は別の病気のことがあります。急に首がかたむく、ふらつく、ぐるぐる回るときは、前庭疾患や脳の病気のことがあるので、早めに動物病院に連絡してください。

この記事の出典

海外の資料は、内容を日本語でまとめ直しています(2026-10-25確認)。